2009年07月28日

朗読オーディオブックの価格と価値

 お話しPodの「朗読ライブラリー」に、小林多喜二「蟹工船」と夏目漱石「こころ」との全編を公開して一週間が過ぎた。

 この間、いわゆる「オーディオブック」として売られている朗読作品の価格を調べてみた。以前は、朗読CDというと70分くらいの収録で2000円くらいしていた。しかし、多くのものが商売にならないくらいの売上にしかならなかったのだろう。今ではずいぶん安くなっている。平均して、60分の録音で1000円くらいになったろうか。

 朗読の録音が売れない理由はいくつかある。朗読の評価とその質の問題である。「朗読にはプロがいない」というのは、わたしの持論だ。アナウンサー、ナレーター、俳優にしても、それぞれの分野でのプロではあるが、こと朗読においてはプロではない。というのも、日本の文化において、朗読の価値は高くないからだ。

 その根本は次のような考えにある。「朗読はだれにでもやれるものである」→「買う価値がない」という考えだ。ここから、さらに、「だれでも読める」→「わたしにもよめる」→「だからわざわざ買うことはない」というわけだ。そこで、「朗読のプロとはなにか」が問われることになる。しかし、今のところ、売られるものとしての朗読の評価はまったくなされていない。

 オーディオブックの市場を見ると、作家名と作品名を重点に売られている。読み手が問題にならないのは、朗読そのものの質と価値とが見られないからだろう。クラシック音楽の素人は、ベートーベンの第九が聴けるなら、楽団も指揮者も問題にはしない。聞き手の能力があがるにつれて、どの管弦楽団をだれが指揮した演奏なのかにこだわりが生まれる。朗読も同様である。作者や作品に加えて、だれがよむのかが問題になったときに、初めてオーディオブックとしての朗読作品が売れることになるだろう。まだまだ先がながい文化活動だと思う。

 さて、そこでわたしの表現よみ作品の価格だが、およそ一時間840円という最低賃金レベルの値段で、四時間の「蟹工船」が3360円。10時間の「こころ」が8400円というのは、高いか安いか、それはほかとの比較になる。ただし、よみの内容についてはまったく問題にしない場合のことである。(下記のリンクをクリックするとWMAファイルの冒頭が聴けます)
蟹工船・冒頭(試聴版)(WMAファイル)
こころ・冒頭(試聴版)(WMAファイル)
posted by 渡辺知明 at 09:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 表現よみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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