2014年05月01日

第57回群像新人賞評論部門第一次落選論文

渡辺知明「小説の対話構造――太宰治「女の決闘」をよむ」
小説のよみ方として文体の構造をよむというテーマです。
拙著『朗読の教科書』第7章「語り口」論の応用です。
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関心ある方は全文をPDFでお読みください。小説の対話構造(PDF)
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2009年02月21日

宮沢賢治の「労働三部作」―「猫の事務所」「オツベルと象」「カイロ団長」

 こんな言い方がされているかどうか分かりませんが、「猫の事務所」「オツベルと象」「カイロ団長」の三作品を「労働三部作」とでもいいたくなりました。以前から、「猫の事務所」「オツベルと象」に二作が「労働問題」を取りあげているのは知っていました。また、よんで録音もしていました。「猫の事務所」は職場の官僚主義やイジメ、「オツベルと象」は労働の搾取や労働者の団結の問題などにふれています。

 最近、「銀河鉄道の夜」をドラマリーディングにしようとして『新編銀河鉄道の夜』(新潮文庫)で、「カイロ団長」をよみました。これは、なんと、現在問題になっている「派遣労働」に通じる作品です。それで、この三作をまとめて「労働三部作」といった名を思い浮かべました。

 わたしは以前から宮沢賢治については、さほど評価をしていませんでした。それは、賢治について騒いでいる人たちの騒ぎように同調できなかったからです。ところが、荒川洋治『文芸時評という感想』(四月社)を読んで、同様の考えが語られているのに同感しました。それ以来、わたしの賢治評価は変わりました。今回の提唱もその一環です。これから「カイロ団長」のよみと録音にかかろうと思っています。

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2009年02月17日

朗読と音楽のコラボレーション―現代朗読協会の試み

 わたしはこれまで朗読に音楽を入れるという表現をいろいろと聞いてきた。そのことごとくが中途半端に終わったという感想を抱いてきた。しかし、2月11日に現代朗読協会(代表・水城雄氏)が夏目漱石の「夢十夜」を素材にしたピアノと「群読」による試みには感心した。(公演が予告されたときから関心はあったが連絡方法もわからず都合が付かずに下記のサイトの録画で聞いた)
http://blog.livedoor.jp/roudokuorg/archives/51326050.html

 本来、朗読は作品を生かすことによって表現者の表現行為の実現を示すものである。たとえば、どんなに塩味が好きな調理人でも、すべての食材を塩味にしてしまっていけないのと同じだ。わたしは朗読における作品の処理の仕方を「語り口」とよんで、その実現を表現よみと呼んでいる。

 今回の「夢十夜」は作品のムードとその処理とがうまくいっていた。取り上げられた「十夜」は、絵画でいうなら、サルバドール・ダリのようなものである。日常的なリアリズムとはちがう作品だ。それが複数の女性たちの独特な朗読表現によって生かされていた。

 また、おもしろいことに、そのようなよみ方をすることによって、文の意味がより明確に表現されていた。作品の「語り口」の把握がいかに作品の根本を規定するかという証明だろう。今後の表現活動に期待の感じられる試みであった。
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2008年11月27日

朗読賞の結果―太宰治「女の決闘」のよみ

 お話しPod&ラジオデイズ朗読賞2008の審査結果が公開された。97編の応募をぽつりぽつり聞いていたので、結果に関心があった。最優秀賞は山口葉子さんの太宰治「女の決闘」である。いろいろな意味でおもしろい。

 この作品のよみを聞いたのは初めてだ。今年の太宰治没後60年と来年の生誕100年を機に注目すべき作品だと思う。

 わたしは以前に『表現よみとは何か』を書くときに文体分析にもとづいてよんだことがある。さまざまな「語り手」が混在している文体だ。太宰治がロシア文学者のドストエフスキー論をヒントにして書いたという説もある。
山口葉子さんは、そのいくつかの「語り口」を見事によみ分けている。

 朗読というと単調に単一の調子で読み上げるのが通例だが、山口さんのよみには、複数の語りの声がある。これがおもしろい。

 また、選評でおもしろかったのは、応募作品を4つに分類した次の項目だ。なるほどと思う。わたしは(4)は表現よみだなと思った。

 今回の作品の傾向を分類すると次のようになります。
(1)朗読の初歩としてまじめにていねいに読み上げた作品
(2)作品をはなれて自分なりの大胆な冒険を目ざした作品
(3)既成の朗読やナレーションを手本にしてよみ上げた作品
(4)作品の世界をとらえて芸術的な表現をした作品

 わたしはこの分類を参考に応募作品を聞き直してみた。すると、朗読作品の評価の基準と言うものが見えてきた。今後、朗読を聴くときの参考になるだろう。
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2008年04月29日

PCMレコーダによる朗読劇録音―「夕鶴」―

 4月18日(金)夜、神奈川県川崎市の日本民家園で、川崎多摩表現よみの会による朗読劇「夕鶴」(2回公演)が行われました。火を焚いた炉端を囲んでのしみじみとした会でした。わたしはオリンパスのPCMレコーダLS-10を持参してテスト録音をしてみました。

 LS-10はデジタル録音をWAV形式ファイルでできる優れものです。しかも、厚みはあるものの携帯電話をやや縦長にしたくらいの大きさなので、持ち運びに便利です。デザインも小ぢんまりした可愛らしいものです。

 録音の質はすばらしいものでした。44.1Khz16ビットで録音したものを冒頭の5分ほどをMP3ファイルにしたものを下記に公開します。わたしはこれまで、カセットテレコやMDで録音してきましたが、テープのノイズやMDの内部雑音になやまされました。

 しかし、PCMレコーダではそのような雑音はありません。録音では、炉端でぱちぱち薪がはぜる音まできれいに入っています。これならば、録音したものをCDに焼き込んでもいいし、ポッドキャスティングしたら、最適です。ミキサーやマイクなども買う必要がないので、これ一台で自宅で簡易スタジオができそうです。もちろん、日常の朗読練習の録音用として長時間録音にも使えます。

 朗読の勉強をする人たちは、近ごろカセットテレコやMD録音機からICレコーダに乗り換えています。PCMレコーダもずいぶん安くなりました。ICレコーダのおよそ二倍くらいで手に入ります。少し我慢してお金を貯めてPCMレコーダにすることをお勧めします。

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2007年10月15日

映画の魅力は人物の魅力―『青空のルーレット』から

 映画の魅力の大きな要素に人物の魅力がある。初めて出会った俳優であっても、作品を見ているうちに親しみを感じて、いつの間にかその人物と知り合いになったように気になる。そして、見終わったあとには、「ああ、人間とはいいものだな」と思わせてくれる。映画評論家・淀川長治さんもこんなことを言っていたような気がする。

 さて、『青空のルーレット』である。この作品に登場する俳優たちのほとんどを、わたしは知らなかった。しかし、試写を一度見ただけで以前からの知り合いのような気がする。そして、それぞれの人物たちの存在感がうれしい。それは、テレビのヴァラエティなどでは出会うことのできない魅力的な人間の姿だ。

 主役の塩谷瞬――働く青年の青春の姿。ヒロインの貫地谷しほり――表情の豊かさと手紙を読む声の表現力。主人公の同僚の青年たちのすがすがしさ。憎まれ役・平田満の微妙なユーモアもいい。

 そして、小説家志望の萩原さんの妻・鈴木砂羽、中島知子の演ずるところのキャバレーのホステス、包容よくある女性の典型だろう。この作品の人物たちと出会う楽しみ――それも作品『青空のルーレット』の魅力だ。(2007年11月3日より公開。映画『青空のルーレット』公式サイト)
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2007年10月12日

テレビドラマ『金八先生』が変わった!

 わたしはこれまでの『3年B組金八先生』は見なかった。武田鉄矢の話しぶりや、ドラマの作り方が不満だったからだ。だが、きのうからスタートしたニューシリーズは見た。脚本に「清水有生」とあったからだ。

 この人は武田鉄矢主演の『夫婦道』を書いた人だ。喜劇的なドラマがすばらしく、続編を作って欲しいと思うほどのおもしろさだった。というわけで、期待したのだが、期待どおり作品だった。これならば、わたしは引き続き見るだろう。

 今回はシリーズのスタートなのでさまざまな見せ場があった。ひとつは、3年B組の生徒の紹介を、それぞれの描いたという水彩画で紹介する場面だ。ドキュメンタリー風のやりとりで、全員がノリノリの楽しさだ。また、なによりもありがたいのは、武田鉄矢のあの説経くさい「語り」ぶりが少なくなって、しかも、批評されるべき人物となっていることだ。

 テレビドラマというと、現代風俗をただ紹介するための説明セリフの多いものが大衆受けするものであるが、清水有生の脚本はドラマの本道を行くものだ。わたしは今後のシリーズの展開に期待して見続けることにする。(リンク清水有生日記)
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