2006年06月12日

声の表現のカギを握る強弱アクセント理論

 地方でアナウンサーから朗読を学んでいる方から、わたしの主張する日本語の強アクセント(「渡辺知明の朗読論」)についての質問と要望をいただいた。強アクセントというものがなかなか理解できないので、できることなら、高低アクセントと強弱アクセントとのちがいがわかるような録音をアップしてほしいということである。

 じつは、昨年、秋の表現よみO(オー)の会5周年記念で、元NHKアナウンサーの小林大介氏との対談で、高低アクセントのよみと強弱アクセントのよみの対比を行ったのである。また、今年5月の福島磐梯町での公演でも、やはり小林氏と同様のテーマで対談をしたのである。この録音は残っている。小林氏の了解が得られれば公開もできるかもしれない。あるいは、わたしが独自に録音構成をしてみるかもしれない。

 高低アクセント理論の弊害というものがある。これはアクセントの問題にはとどまらない。発声や文学作品の表現にも関わってくるのだ。簡単にいってしまうと、高低アクセントはアナウンスのためのものであって、声の表現を阻害するものだ。また、高低アクセントを採用することによって、発声方法そのものがしばられるのである。それに対して、強弱アクセントは、現代のにおいては失われた日本の伝統的な発声方法をよみがえらせるものである。

 今、この時代に強弱アクセントの理論を唱える人は、わたしのほかに見あたらない。だが、かつて、折口信夫言語情調論』、幸田露伴音幻論」(『露伴随筆集(下)』所収)などでは、重要なものとして問題にされている。強アクセントは高低アクセントの立場に立つ限り実現できないものである。端的に言うと、声の表現の本質は強アクセントプロミネンス(いわゆる「強調」)である。ただし、強アクセントを目指すための独自の発声方法に支えられてこそ成り立つ。その表現効果は、朗読に限らず演劇など、声に関するあらゆる分野に及ぶものである。
言語情調論
言語情調論折口 信夫


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露伴随筆集 (下)
露伴随筆集 (下)幸田 露伴


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posted by 渡辺知明 at 17:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 音声表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月02日

古典文学の音声表現の必要性

 今、「方丈記」「徒然草」「竹取物語」をよんでいる。わたしが「よむ」とひらがなで書く場合、音読の意味である。これまで、日本の現代文学や近代文学をよんできたが、とうとう古典文学までが、わたしの視野に入ってきた。

 これまでは、文学作品をよむためには、よみ手に音韻のイメージがないとよめないと考えてきた。音読の読者にとっても同じである。いわゆる「若者の読書離れ」というものの一つの要因として、本から文章の音韻のイメージが浮かばないことがあると考えている。

 とくに、明治大正時代の時代の声のイメージがないことで、近代文学が読めなくなってしまい、作品が文字のデータになってしまうのではないかと指摘してきた。わたし自身が、文語体の文学作品についても、どうやらよみこなせる見通しがついてきた。そうなるとつい欲が出て、日本文学の古典に目が向いたのである。

 古典文学はすでに音声表現としては滅びている。現代人が声に出してよめるほどの音韻のイメージはない。だが、もしかして、わたしにも、ひとつの声のイメージを提供することができるのではないかと思うのである。これまでも古典文学の表現よみについて考えたことはある。しかし、一つの躊躇があった。それはわたしの文学の恩師のことばである。「古典文学は西のものだからアクセントも関西風ではないか」というのである。

 しかし、最近、わたしはいわゆる「アクセント」へのこだわりがなくなった。現在、いわれるアクセントは、高低アクセントである。それに対して、わたしが考えるアクセントは強弱アクセントである(渡辺知明の「朗読論」参照)。こちらのアクセントが、日本の伝統的なアクセントであることは、文語体の近代文学作品、たとえば、樋口一葉「にごりえ」や幸田露伴「五重塔」などをよんで確信してきた。

 また、現代の関西アクセントも、古典の時代から変化してきたはずである。ならば、わたしが現代において強弱アクセントで表現する古典文学も、単なる古典文学の歴史的な再現ではなく、現代においてよまれるべき古典文学の音声イメージの提供になるのではないかと考えている。というわけで、すでに「方丈記」は録音して公開を始めているが(「古典をよむ」)、そのほかの作品についても、今後、録音し、公開していくつもりである。それが大きくは日本文化への貢献になると思う。

方丈記―付現代語訳
方丈記―付現代語訳鴨 長明


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posted by 渡辺知明 at 06:31| Comment(0) | TrackBack(2) | 音声表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月27日

第10回表現よみO(オー)の会公演

 下記の内容で、表現よみO(オー)の会を開催します。まだ、チケットが若干あるので、お時間のある方はお出かけ下さい。
 6月19日は「桜桃忌」(太宰治の命日)なので、かならず、太宰治作品を入れている。また、今回はドラマ・リーディングとして「シラノ・ド・ベルジュラック」を渡辺知明の脚色で行う。日本では、まだまだドラマ・リーディングはめずらしい。演劇の片手間ではなく、独立したジャンルとして定着させたい。理想は、耳で聴いているのに舞台が目に浮かび、さらに表現としてリアルな人間像が浮かぶことである。(チケット申込みは渡辺知明へ)

◎第10回 表現よみO(オー)の会
「声による文学の表現」
―ドラマ・リーディングと日本文学の味わい―

6・19桜桃忌/太宰治……岩崎 佳江
好人物の夫婦/志賀直哉……西沢 文子
6・19桜桃忌裸川/太宰治…山口 葉子
こころ / 夏目漱石 ………… 吉野由美子
しん女語りぐさ/唐木順三 … 木内 章子
《ドラマ・リーディング》シラノ・ド・ベルジュラック
エドモン・ロスタン原作(渡辺知明・脚色)
渡辺知明/鈴木澄江/佐藤絹代/秋葉紀世子/江田玲子/
神戸木綿子/黒部二三四/白銀由布子/吉田真理子

と き:2006年6月4日(日) 開場2:00 開演2:30 終演4:45
ところ:ニューオータニイン東京(JR大崎駅東口前)「かえで」
チケット:前売1,500円(当日1,800円)

※わたしの推薦本(「裸川」所収。太宰文学の傑作集!)
お伽草紙・新釈諸国噺
お伽草紙・新釈諸国噺太宰 治


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シラノ・ド・ベルジュラック
シラノ・ド・ベルジュラックエドモン・ロスタン 辰野 隆 鈴木 信太郎

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stars新訳希望です。
stars感涙必至!
stars人間の美醜とは。
starsシラノ・ド・ベルジュラック
starsとにかく読んでみてください。

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posted by 渡辺知明 at 07:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 音声表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする