2008年02月08日

朗読批評講座(10)高低アクセントのよみ

 このシリーズのきっかけは、「蜘蛛の糸」をテキストにして朗読の実験的なパターンを16通り録音してみたことです。そして、わたしの「蜘蛛の糸」のよみをまとめとして示しました。(参考=『Web表現よみ入門』

 第10回は、高低アクセントによる読み調子です。日本語のアクセントというと、高低アクセントというのが常識のように言われます。しかし、わたしの考えでは、日本語のアクセントにも強弱があります。というよりも、むしろ、強弱アクセントの方が優勢だと思われます。いわば強弱が8割で高低が2割くらいの感じです。

 アナウンサーでも実際には高低アクセントではなく強弱アクセントで読んでいる人の方が多いのです。男性アナウンサーはほとんど強弱アクセントです。男性アナウンサーの高低アクセントには、2、30年前の古い録音などで出会うことができます。近ごろでは、女性アナウンサーの高低アクセントも珍しいものになりつつあります。

 ただし、女性アナウンサーでも高低で読もうとすると、かなり意識的な無理をしなければなりません。わたしの読みではあえて高低を強調していますので、不自然な感じになっています。しかし、朗読を学ぶ人たちは高高低アクセントの理論を学ぶので、読みにおいても高低を強調した読みになりがちです。

 原則として高低アクセントは表現のアクセントではなく、伝達のためのアクセントなので、そうその調子で読むと、ややきどった感じにならざるを得ません。そうして、何よりも問題なのは、文章の中身よりも音声の調子を優先させてしまうことです。ですから、このようなよみ方は文学作品の表現には向いていないということになります。
posted by 渡辺知明 at 12:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 朗読批評講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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