第9回は、テレビなどで外国人の発言を吹き替えているときのようなよみ調子です。映画監督の森達也さんは「ボイス・オーバー」というこの手法を紹介して次のように書いています。(07.2.11東京新聞)
「人が何かを語るとき、言葉の意味さえわかればよいというわけではない。言葉を発する彼や彼女の一瞬の逡巡や息づかいなどは、現場やその人のキャラクターを伝えるうえでとても重要な要素なのだ。発せられた言葉そのものよりも、言葉の抑揚や間が、その人の内面を鮮やかに物語る場合はいくらでもある。」
吹き替えの声からは文字的な情報は伝わります。しかし、人間の感情や心情は伝わりません。このような手法に慣れてしまうと、人間の声の真実を聞き取れなくなってしまいます。また、このような手法で語る仕事をしている人たちには、人間が真実を語る声の表現を見失う危険があります。
それでは、こんな調子に流してしまうような「蜘蛛の糸」を聴いてもらいましょう。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
「まさか、こんな朗読はないよ」と思われるかもしれませんが、ちょっと気をゆるめて、文章の内容への集中力を失うとおちいりがちなのです。そして、そこに生まれるのはまるで歌うような機械的な調子なのです。(つづく)