【連載】第27回
●添削では何をどう書き加えるか?
今回はレジュメの「3添削の原則と手順」の「(2)加える」についてお話しします。レジュメには、@文とA単語とB接続語の書き加えと三つの項目をあげました。
文を加えるのは、内容の書き込みが不足している場合です。或る文のあとに文を入れないと文がつながりません。文の種類としては、説明、注釈、追加などがあります。わたしが文を書き加えるときの基準としているのは文章展開の四種類です。(澤田昭夫『論文の書き方』講談社現代文庫)
論文の書き方 (講談社学術文庫 (153)) | |
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●文章展開の四種類
文章展開とは次の四つです。
@物語、A描写、B説明、C論証
これは論文のレトリックのとして提唱されていますが、あらゆる文章に当てはめることができます。むしろ、論文よりも一般の文章の書き方に広く応用できます。
第一は、「物語」です。時間のながれによる文の展開です。時間の系列でできごとを書きます。「……した。それから……した。それから……した。」という文章のつながりです。たとえば、仕事の手順の書き方です。たとえば、料理のレシピです。「初めにこれをして、次にこれをして……」という時間系列で仕事を進めます。それを文章で書いたものが「物語」の展開です。
出来事を時間の順序どおりにていねいに述べてほしいのに、飛躍していることがあります。そのために分かりにくくなります。もちろん、飛躍させた方がいい場合もあります。しかし、「物語」で書く能力の不足のために、飛び飛びにしか書けないのでは困ります。また、出来事の順序が入れ替わってしまうのも困ります。まず、出来事を時間の系列にしたがって順序どおりに書くことは基本です。さらに、細かく書くこともできるし、飛躍させた書き方もできる必要があります。
物語の展開の基本は、時間系列にしたがって細かく文章を展開できる能力です。たとえば、テーラーシステムの設計などもそうですね。作業工程の管理をする場合には、このような時間系列の細やかな展開を文章で書くことのできる分析能力が必要です。どういう工程で、生産なり管理なりが行われるか、文章に書くことで考えることができるのです。
学校の作文教育では、「それから、それから」という書き方はアタマから否定されるようです。しかし、まずは時間系列で書ける能力をつけることが基本なのです。というわけで、書かれた文章が飛躍して荒っぽい展開をしている場合には、「物語」の展開の文を書き加えるのです。
●描写とは?
第二は、「描写」です。これは空間的にものを描き出す書き方です。「物語」は時間の展開、「描写」は空間の展開です。ものごとを明確にする場合、説明と描写とがあります。文学的な文章においては重要ですが、一般の文章論では重視されません。理論的な論文においても、事例を取り上げるような場合には描写的な表現が必要です。
たとえば、ある会社に機械が置いてあるとします。機械の配置について文章を書いて考えます。その場所には、機械が何台あるのか。どのような配置になっているか。天井との関係はどうか。床はどうなっているか。目に見えるものについては、説明をするよりも描写をする方がよく分かります。広い意味での説明といえるのです。
目に見えるように示すべきところで、そのものが見えない場合があります。描写不足です。その場合は描写の文を書き加えます。ただ「文を足しなさい」と指示するのは有効ではありません。「情景が分かるように描写で書きなさい」と展開の方法を示すのです。
●なにを説明するのか?
第三は、「説明」です。論文を例にしましょう。専門的な用語などが出てくることがあります。そのたびに用語の定義をするでしょう。そうしないと、話を先に進められません。
ごく簡単な文章でも説明は必要です。たとえば、「わたしが玄関から外へ出ると山田さんの奥さんと会った。」と書きます。そこで、「山田さんの奥さんというのは……」というように、新しい情報がでてくるたびに説明を加えるわけです。
専門的な論文ならば、用語の定義は繰り返し繰り返し行われるわけです。その場合、「……とは」という書き方が、説明の基本的なスタイルです。いわゆる、「コトバの定義」の表現です。注釈とか、コメントとかいうものです。描写とはちがって、ものが目に見えなくてもよいのです。それが説明です。(つづく)