2007年10月21日

朗読における「場面」と「語り手」

 言語理論では発話は脈絡において意味を持つという考えがある。発話の脈絡は次のように分けられる。(下川浩『現代日本語構文法』1993三省堂)

         ┌―言語的脈絡(=文脈)
 発話の脈絡 ┤
         └―非言語的脈絡=(1)場面、(2)文化的・社会的背景

 音声言語として朗読で問題になるのは「場面」である。言語的な文脈は特別な声の表現は必要ない。音声訳やアナウンスでも不十分ながら伝わる。だが、非言語的な脈絡の「場面」は、声で表現せざるを得ない。その原則は次のようなものである。ここに文学作品の「語り手」を声で表現するための基礎がある。(朗読にかかわる要素を太字で示す)

 「話し手/書き手 ・ 聴き手/よみ手が だれで いつ どこで 文章が書かれた/談話(語り)が 行われたか?」(前著108ページ)

 これはオーラル・インタープリテーション(口頭解釈)においても原則とされている。わたしはここから「語り口」の10通りというものを導き出して紹介している。(参考『Web表現よみ入門』の「「語り口」の10種類」)

 作品に的確な「語り口」が設定されて表現されたときに声の表現は実現する。そのとき、それは朗読ではなく表現よみとなっているのだ。
posted by 渡辺知明 at 09:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 音声表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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