2007年08月21日

朗読の疑問―題が先か作者が先か?

 作品を朗読するとき、題名が先か、作者が先かという疑問がある。

 それ以前に、作品を読むときに、タイトルと作者名を言うか言わないかという問題もある。わたしは「言う派」である。理由は二つ、一つはよみ手自身にとって心構えができるということ、二つは聴き手にとっての心構えである。もちろん、読み手にとっての意義が前提である。

 さて、タイトルの言い方である。たとえば、芥川龍之介「鼻」の場合、次のような3通りの名乗りがある。

 (1)「「鼻」、芥川龍之介」
 (2)「芥川龍之介著、「鼻」」
 (3)「芥川龍之介作、「鼻」」

 朗読の場合、(1)が一般的である。この心は「私は芥川龍之介が書いた「鼻」という作品を読みます」となる。書かれた原稿をイメージすれば、この通りに書かれているだろう。つまり芥川龍之介の原稿を読み上げますという態度が表現されている。

 これよりも読み上げに近いのは(2)である。出版された作品のタイトルはまさにこのような形である。(1)が原稿を読むのに対して、(2)の「著」はを読むという態度になる。だが、どちらも「書いたものを読み上げる」という態度は共通している。(ちなみに、岩波文庫では、フィクションの作品では「(作家名)作」、ノンフィクションの作品は「(作家名)著」と明確に区別している)

 わたしは一貫して(3)である。芥川龍之介作の「作」は何を対象として読むかという問題だ。原稿でもなく、本でもないのである。「作」というときには、文章や書物という形式的な手段を通じて表現された「鼻」の世界である。ここに作品の文章を読むのではなく、表現された作品そのものを声にするという気構えがあるのだ。

 こんな細かいところにこだわらなくてもいいじゃないか、と思われるかもしれない。しかし、朗読を音声表現の1ジャンルへと発展させようと、わたしはこんなところでも主張しているのだ。
posted by 渡辺知明 at 20:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 音声表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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