●吉川トリコ『しゃぼん』2004新潮社
●辻原登『円朝芝居噺 夫婦幽霊』2007講談社
表題作「しゃぼん」の主人公は30歳になろうとする女性で自らの「語り」の形式だ。一見、なんということはない日常的なつぶやきの向こうに主人公の置かれた状況と生きる迷いが浮かびあがる。太宰治「女生徒」を思わせるみごとな「語り」だが、それ以上に、作者の批評の精神に魅力がある。
しゃぼん | |
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『円朝芝居噺 夫婦幽霊』は、作者の「語り」による構成である。そこで展開されるのは、円朝の速記本を巡る話題である。そうして紹介される円朝の「夫婦幽霊」がおもしろい。まさに円朝が語ったかと思われる生き生きとした「語り」である。終わりごろになって、二葉亭四迷からの引用や中島敦「悟浄出世」に似た表現が出てくると、「おや、これはフィクションなのか」と疑うたのしみもある。
円朝芝居噺 夫婦幽霊 | |
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というわけで、この2冊は朗読や「語り」をする人たちがとりあげるのに最適の作品なのである。わたしも近ぢか表現よみしてみようと思っている。(2007/10/2追加=声でよむ名作本シリーズ『しゃぼん』『円朝芝居噺 夫婦幽霊
』
速記の発展の様子とか、いろいろと読みどころがあって面白く読みました。