2007年06月29日

伝達のアクセントと表現のアクセント

 『NHKアナウンサーのはなす・きく・よむ(声の力を生かして編)』(2007年版)を読んだ。年を追うごとに、「朗読」の比重が増して、今年は半年分の内容のうち6分の5になっている。4月が語りきかせ、5月が人前ではなす、6月がよむ(基本)、そして、7月から9月は3回にわたって「朗読」である。
NHKアナウンサーのはなすきくよむ 声の力を生かして編 20 (2007)
NHKアナウンサーのはなすきくよむ 声の力を生かして編 20 (2007)日本放送協会 日本放送出版協会


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 内容の変化はそれだけでない。国立国語研究所の元所長・水谷修氏に「話すことばと文章音読の音声」を書かせている。テーマは、どうしたら朗読が読み上げではなく表現になるかということだろう。「卓立」の重要性をとりあげている。一読に値する文章だ。

 この文章に代表されるように、今年の内容には「表現」というテーマが見えている。また、「語り手」あるいは「語り口」というような意識を持つようになったのもNHK版「朗読」理論の進歩だろう。さらに、作品論としての「語り口」論が出てきたら、文学作品の表現としての朗読の実践も発展すると思う。

 わたしの関心をひいたのは、榊寿之アナウンサーの書いた「現在形」の表現という文章だ。ここには、「現在形の工夫」として文末の止め方の重要性が書かれている。注意点が二つある。

(1)文末を素早く・鋭く、(2)文末を止める

 現在形の工夫というのは、じつはNHK版「朗読」の伝達から表現への転換の一案なのである。だが、これを実践的に実現するには二つの障害がある。一つは、高低アクセントの理論である。現在、多くのアナウンサーが高低アクセントのよみかたをしていないにもかかわらず、理論としてはある。高低アクセントはいわば、アナウンスやナレーションのために磨かれてきた理論である。

 もしも、「朗読」で表現をめざすなら、強弱アクセントへの転換が必要である。そのためには決定的な問題として、強弱アクセントを実現するための発声が行われねばならない。残念ながら、榊寿之アナウンサーの「工夫」でも、そこまで実践方法が届いていない。

 
posted by 渡辺知明 at 08:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 音声表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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