わたしは自分が子どものころ、ラジオの落語や講談を聴いていたときのことを思いだした。最初のころには、それがどんな話なのか分からなかった。だが、しだいに話の内容も理解できて、そのおもしろさが分かるようになった。それは文字で書かれた文章を読むのとはちがった能力が要求されるのだ。
以前にディープ・リスニングというコトバを紹介したが、耳で聴くときには、聴いた声のイメージをアタマに浮かべながら、コトバの内容を理解するのだ。それと同様に、目で文字を読むときにも、この声のイメージは働くのである。どちらの場合にも共通する声のイメージは、学術的には音韻表象と呼ばれる。
音韻表象が的確にアタマに浮かぶようになれば、話を聴く力も本を読む力も伸びるのである。それをきたえるのに、一つの有効な方法が「声でなぞる」という訓練である。そのための表現よみの録音は、いくつか上げてあるので、ぜひとも実行してみてほしい。