2007年04月22日

文章推敲力を育てる添削入門講座(24)大学編

◎ある大学で文章添削の実践者のための講義をしました。あらためて驚いたことは、文章の書き方の本は数多くあっても、添削や推敲について書かれた本がほとんどないということです。そこで、わたしはあらためて、文章力の養成を、添削と推敲の角度から考えることになりました。2日間で通算7時間の講義の記録に手を入れて少しずつ公開します。(2006.2.21、2006.3.7。第1−12回は旧サイトにあります)

【連載】第24回
●添削記号の工夫
 添削の記号には決まり切ったものがあるわけではありません。いろいろな工夫の可能性があります。例えば、語句の入れ替えの場合には、線で囲んで入れ替えが分かるように示せばよいのです。第一の目的は、添削をされる人が「こことこことを入れ替えればいいのだな」と分かることです。

 注意するべきことは、添削を見やすくすることです。添削をすればするほど、用紙の全体がグチャグチャして読みにくくなります。赤ペンの線もたどりにくくなります。そうならないように、読みやすい線の使い方をすればよいのです。最短距離で示す方法を選べばよいのです。赤ペンで書きこむのが限界になったら、青ペンを二次的な添削に使うという手もあります。赤の上から青で書けば目立ちます。宮沢賢治の推敲原稿では、赤や青の書き込みがあります。(参考=渡辺推敲原稿)

渡辺推敲01渡辺推敲02

 さらにこんな記号も付け加えておきます。E改行の印です。長い段落の場合、あるいは段落の中で話題が変わる部分についてはこの記号で示します。クランクの形で改行の位置を示します。F行を続けるという記号もあります。これは長く伸ばした逆のSのかたちで、行末と行頭とをつなげるものです。段落を続けときにも使います。

 そのほかに、わたしが独自に使っている記号もあります。ヤマカッコです。保留の意味です。「これは、なくてもいいかな?」という部分を山カッコでくくります。そしてその脇に ? をつけておきます。そこを削るかどうか、判断は書き手にまかせます。これも、親切に学生に教えてあげるための記号つです。「どっちでもいい」という記号です。これも添削のルールに入れておくとよいのではないでしょうか。そうして、学生には、添削を受ける前にあらかじめ、添削の約束ごとをまとめた用紙を配布しておくと理解が深まるでしょう。

 どちらかの表現を選びなさいという記号もあります。まちがいではないけれども、別の表現があるという記号です。該当する語句に傍線を引きます。そして、その脇に代替案を記入します。これにも傍線を引きます。これがミソです。ほかの添削とちがうところです。二つあれば、二つ書きます。学生は検討して、どちらかの表現を選択することになります。検討することで学生は文章を推敲したことになります。

 また、わたしはコメントを記入する場合には、必ず頭に ※ をつけます。あるいは、コメントはカタカナで表記します。そうしないと、添削のことばなのかコメントのことばなのかわかりにくくなる可能性があるからです。

●添削の相互理解
 少なくとも、添削者と添削される者との間に、添削記号の共通理解が必要です。添削を受ける人が、どのように文章が添削されたのか理解できる共通ルールです。添削者の記号が添削される者に理解されることです。ルールが共有されることによって後のち、学生自身が、自分の力で自分の文章に添削できるようになります。そんなルールについても、これから考えてゆきましょう。

 先ほど、「わたしの力でやってゆけるのでしょうか?」とおっしゃった方がいました。わたしは一律に完璧な添削を求めているのではありません。「ここまでなら共通してやれる」というところで進めていけばよいでしょう。そのためには、原則となる共通ルールが必要なのです。その線をどこに引くかは、皆さんが協力して出していけばよいことです。ですから、心配しないでください。皆さんがやれるところの共通の添削をすればよいのです。

 添削を受ける側が記号が読めるようになれば、添削者が完璧に直さなくてもよいわけです。つまり、添削された文章を受け取った学生が、それをヒントにして自分の文章を推敲できればよいのです。添削者が検討するべき部分に記号をつけて、あとは書いた当人に推敲を任せるということでよいのです。添削者の考えで完璧な添削をするよりも、むしろそのほうが、学生の文章推敲力が高まるのです。(つづく)

ラベル:文章 推敲 添削 作文
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