2007年04月11日

文章推敲力を育てる添削入門講座(23)大学編

◎ある大学で文章添削の実践者のための講義をしました。あらためて驚いたことは、文章の書き方の本は数多くあっても、添削や推敲について書かれた本がほとんどないということです。そこで、わたしはあらためて、文章力の養成を、添削と推敲の角度から考えることになりました。2日間で通算7時間の講義の記録に手を入れて少しずつ公開します。(2006.2.21、2006.3.7。第1−12回は旧サイトにあります)

【連載】第23回
●添削には校正記号を使う
 それでは、実践的なお話しに入ります。校正記号についてのお話です。
 ここであらためて言いますが、添削には校正記号を使います。しかし、添削について書かれた本で、はっきりと「校正記号を使ってやるのです」と書かれたのを読んだ覚えはありません。また、説明も書かれていないようです。そもそも添削の本がないのですから当然です。
 どなたか英語の校正をおやりになった方がいらっしゃるそうですけど、どなたでしょうか。「どういう記号をつけたらいいのか困った」という方いらっしゃいましたね。どなたでしょうか。そうですね。「添削をしてください」と言われても、どういうふうな書き込みをすればいいのか、まったく知らなければ困ります。
 校正記号の説明としておすすめする本は、日本エディタースクール編『校正記号の使い方』(1999日本エディタースクール)です。安いのにも関わらず、よくまとまっています。
校正記号の使い方―タテ組・ヨコ組・欧文組
校正記号の使い方―タテ組・ヨコ組・欧文組日本エディタースクール

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 このテキストをご覧ください。ずいぶん多くの記号があります。しかし、それほどたくさんの記号を覚える必要はありません。添削に使う記号として、わたしは8つの項目に丸をつけています。
 わたしの講義レジュメをご覧ください。「2添削の方法と手段(2)校正記号」に必要な項目を8つあげてあります。
 @誤字を直す、A文字を入れる(句読点)、B取り去る(取り去ったあとをあけておく)、C字を入れ替える、Dはなれた字を入れかえる、E改行、F行を続ける(追い込み)、G行を入れかえる
 以上です。どうでしょうか、私がお配りした添削の見本の例をご覧になると、とくに知識がなくても、けっこう常識で読み取れるでしょう。要するに、赤ペンの部分についてどのように直すか読みとれればよいわけです。
 
●添削には赤ペンを使う
 また、あらためて言いますが、添削には赤ペンを使います。なぜ赤ペンを使うのでしょうか。また、なぜ赤ペンを使うことに意味があるのでしょうか。
 はじめに、赤ペンを使うことの意義をお話しておきます。印刷された文章には、なかなか手を入れにくいものです。活字にはある種の権威が感じられるからです。わたしはレジュメにこんなふうに書いています。
 「活字でよむ文章には権威が感じられる。しかし、赤ペンを使って、印刷された書類や本をよごす経験は大切である。書物の権威と戦うことで、文章に自由に手を入れられる」
 「書物の権威と戦うこと」、これが重要なのです。あとは、「日ごろから赤ペンを入れながら文章をよむことによって、批評的な読み方が身につけられる。」という訳です。じつは、赤ペンを使ってよむことは、学生にやってもらいたい事なのです。
 本を読むときにも、添削をしながら読んでかまわないのです。赤ペンがいやならば、鉛筆で書き入れながらよむのです。「おかしな表現だな」とか、「この文章はおかしいな」と思ったら、正しい文章に直すのです。これが日ごろの添削の訓練になります。「この言い回しは変だな」と感じたら、その場で線を引いて△をつけておけばよいのです。わたしは実際にやっています。
 本になった文章や作家の文章が完璧かというと、そんなことはありません。どんな作家の作品にも必ず、おかしな言い回しや、直したくなるような表現があります。どんな作家でもあります。本になった文章を完璧だと思う必要はありません。直す余地があります。印刷されたということで権威が生じているのです。
 近ごろは多くの人がパソコンで書くようになりましたから、自分の文章を活字として読めます。本の形にすることもできます。ですから、活字や印刷物への権威はずいぶんなくなりました。しかし、より積極的に添削をしながらよむという訓練も重要なのです。
 ちなみに、わたしが使っている書きやすい赤ペンをご紹介します。100円です。パイロットから出ているVCORN〈直液式・水性〉というものです。いろいろなボールペン式の赤ペンを試しましたが、今ではこれがいちばん気に入っています。
 まず覚えて頂きたいのは、@誤字を直すことです。間違った文字から線を引っ張ってその先に正しい文字を書きます。簡単です。
 A間に文字を入れる場合には、引っ張った線の先を二つに枝分れさせます。ここに書いている記号です。書き加える部分がたくさんになった場合には、線の端を丸く漫画の吹き出しのように囲みます。作家の大江健三郎などは、マルで囲んだ書き込みがたくさんある原稿を書いています。
 Cいくつかの語句を入れ替える場合には、長いS字の形で入れ替えを指示します。あとは、B取り去るでは、文字の上に線を引けばよいのです。わかりにくければ線を二本ひきます。さらに、「トル」と付け加えてもよいでしょう。もしも、直してしまったところが間違っていて、元に戻したい時には、カタカナで「イキ」と書き添えておきます。
 だいたいこんなもんです。このくらい分かっていれば十分です。たくさんの記号はありませんから、むずかしくありません。(つづく)
ラベル:文章 推敲 添削 作文
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