2006年07月15日

文章推敲力を育てる添削入門講座(21)大学編

◎ある大学で文章添削の実践者のための講義をしました。あらためて驚いたことは、文章の書き方の本は数多くあっても、添削や推敲について書かれた本がほとんどないということです。そこで、わたしはあらためて、文章力の養成を、添削と推敲の角度から考えることになりました。2日間で通算7時間の講義の記録に手を入れて少しずつ公開します。(2006.2.21、2006.3.7。第1−12回は旧サイトにあります)

【連載】第21回
●項目には丸数字をつける
 もう一つは、項目立てをしている語句については、線を引いて丸数字をつけていきます。これは、前にも話しましたが、落ちこぼれの塾で国語を教えているときにある生徒から教わって取り入れた方法です。「おもしろいことやってるね」と見つけました。
 ちなみにこんなことをご存知でしょうか。山にある木の数え方です。山の中に三百本ほどの木があるのですが、それをみなさんはどのように正確に数えますか。いろいろな方法が考えられます。わたしが生徒によく話しをするのは次のような方法です。あらかじめ三百本の縄を用意しておくのです。そして、一本ずつその縄で縛って行くのです。縄が不足すれば追加をします。追加の分が正確な数です。また、縄があまれば、それで正確な本数がが分かります。これも、丸数字をつける意味を示す一例です。

 以上のように、印しつけよみと言うのは、みなさんが添削のために文章をよむときの一つの方法です。しかし、これを一般の読書の方法として学生の指導にも利用できます。教科書をいっしょに読みながら、印しつけよみでポイントの理解を共有することができます。「どこそこのコトバにはマルをつけてください」「どこそこのコトバには線を引いてください」「どこそこのことばに丸数字を振りなさい」と言った具合です。

●段落に番号を振る
 さて、ここまで一時間半かかってお話ししてきました。今わたしが話しているのは、レジュメの「二、添削の方法と手段」というところです。はじめに、添削の第一はよむことだとお話しをしました。文章をきちんと正確によむ読み方として、印しつけがあるのです。これについて、最初にみなさんにお渡ししたわたしの印しつけの見本をご覧ください。もう一度、復習をしましょう。資料01資料02

 第一は、段落に丸数字で@AB……と番号をふることです。それにどのような意味があるかお話しします。これによって何が分かるのでしょうか。わたしの教育の基本的な考えは、説教をしないでやらせてしまうということです。理屈でわからせるよりも先に体験をさせてしまうという教育方法です。やってから考えさせる方法です。行為をさせることによって、あとで意識を生じさせる方法です。たとえば、「文章の組み立てをよく見なさい」と言うのは説教です。そうではなくて、「段落に番号を振りなさい」と言うのです。番号を振ればそれによって組み立てが見えてきます。「一段落よりも二段落が短いな」とか、「長い段落があるな」とか、「段落が平均しているな」とか。そんなことが感じられればいいのです。それで、文章の全体が段落によって分析されたことになります。それが認識です。

 添削の場合でも、段落に番号をつけておくことで、学生に文章の構成を自覚させることができます。添削者が段落に番号を振っておいて、あとで段落番号を示して「何段落が長い」とか、「この段落とこの段落はつなげた方がよい」とかコメントすればよいのです。長い段落ついては、「二つに分けなさい」とか指示をします。原稿用紙で二、三枚の文章では、段落をつけずに一つの文章を書いてしまうということもあるのです。

●テーマやキーワードをマルで囲む
 第二に、マルで囲んだ語句は主語あるいはテーマないしはキーワードです。わたしの見本の文章では、マルがついているのは、「学生たち、議論、レポート」などですね。じつは、このマルとセンと四角のついたコトバを抜き出すだけで文章の要約ができるのです。わたしはじっさいの授業ではテキストの文章を印しつけよみしてから、印しのついたコトバを板書します。そうして単語をつないで読みあげて要約をして見せます。新聞記事でも何でも材料になります。

●山カギで名詞句をくくる
 ところが一般的に要約というと、読み手の好みでポイントを抜き出すというような考えが多いのです。わたしが、文章の表現に忠実に山カギでくくった語句があります。これによって文そのものの構造が見えます。〈学生たちの間に蔓延する個人的、抽象的思考〉です。くくることによって、「私は……対峙できない」と書いてあることに対して、「何に対峙できないのか」ということが考えられます。それは、〈学生たちの間に蔓延する個人的思考的傾向〉というものです。さらに言うと、「〈個人思考的考え〉というものが、学生たちの間に蔓延している」という二重構造になっています。くくっておけばそれが一つのキーワードとして見えてきます。それは文章全体のテーマに関わる事になります。この文章の六段落からあとは重要でありませんから、わたしは印しをつけずにざっと読んでいます。(つづく)
ラベル:文章 添削 作文 推敲
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