【連載】第19回
●自分の索引を作る
「本を構造的によむためには、索引を作るという方法もあります。本の全体をつかむためのいい方法です。専門の本などには索引が付けられています。しかし、もとから本についている索引は意外に役に立ちません。パソコンの技術を使って機械的に拾い上げるのでしょう。また、書き手の関心から作られたものなので、読み手としての不満が出ます。わたしはいらない索引を消したり、書き加えたりすることもあります。
「自分のための索引はかんたんに作れます。わたしは索引を学生に作らせます。たいていの本には後ろのほうに空白のページがあります。それを利用します。と指導しています。最初の授業のときにこんなふうに話します。
「この本には索引が付いていないから、自分用の索引を作りましょう。いちばん後ろの空いたページをタテに四つに折りなさい。一ワクごとの上に、ア、カ、サ、タ、ナ、ハ、マ、ヤ、ラ、ワと記入しなさい。そして、これから本を読んで行って、引きたいことばを見つけるたびに、そこに書きこんでページを入れるのです。」
「それからしばらくは、授業のときに「このページの、この用語は索引に入れておきなさい」という具合に指示します。それからあとは学生の自主性にまかせます。
「いちいち書きこむのはめんどうだという人がいます。しかし、経験してみれば分かりますが、「あのことはどのあたりに書いてあったかな」と、あとから本をめくって調べる手間を考えたら、読みながら索引に入れる方がよほど能率的です。要は、それを習慣化できるかどうかです。『随想録』の著者であるモンテーニュも「習慣」の重要性を繰り返し繰り返し語っています。
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「小説を読むときにも索引をつけると便利です。とくに長編ですね。わたしは、エミール・ゾラ『居酒屋』につけました。登場人物が最初に登場するときのページを入れておきます。次に登場したときには、そのページを見ることができます。わたしはほとんど読みませんが、推理小説の犯人捜しにも役にたつかもしれません。
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「そのほかに、目的を決めて拾えば、さまざまなリストができます。わたしは調理師学校で教えていたので、作中に出てくる料理の名前を拾ってみることをすすめました。世間には、文学作品などから索引で拾い出したような内容をまとめたような本があります。そんな作業ならば本を読みながらかんたんにできてしまうのです。
「このようにして索引を作った本は完全に自分のものになります。あとで、読み返したり、テーマについて考えたりするときに、じつに役にたちます。こういうふうになった本はもう捨てられなくなります。これも情報の収集の考えの一つの応用です。(つづく)