2009年01月21日

文章推敲力を育てる添削入門講座(35/35)大学編

◎ある大学で文章添削の実践者のための講義をしました。あらためて驚いたことには、文章の書き方の本は数多くあっても、添削や推敲について書かれた本がほとんどないということです。そこで、わたしはあらためて、文章力の養成を、添削と推敲の角度から考えることになりました。2日間で通算7時間の講義の記録に手を入れて少しずつ公開します。(2006.2.21、2006.3.7。第1−12回は旧サイトにあります)

※全35回の連載をまとめたパンフレット『文章推敲で思考力を高める―大学生のための添削指導法』ができました。A5判64ページ頒価1000円(送料共)。ご希望の方はメールでお申し込みください。

【連載】第35回
●文と文とのつながり

●十一種類の接続語
 添削のレベルの二つめは、文と文とのつながりを見ることです。目の付けどころは、接続語のチェックです。文中に接続語が出てきたら必ず四角でくくって確認してください。よく見かけるのが「そして」です。これを使った文章はたいていダメです。たいてい要らないので削ります。

 ところが、うまいのもあります。漱石などは「そうして」という接続語をうまく使っています。なにか述べておいてから、間があって「そうして」となります。いいところで使うのです。

 「そして」が出てくるのは、先ほど話した四つの文章展開のうち、「物語」の場合です。さまざまな事態が順々に起こって、最後に「そうして」と決まるような場合には生きた表現になります。

 接続語の種類については、わたしが接続語を十一種類にまとめた「接続語の論理的機能一覧」をご覧ください。二〇〇二年にまとめました。これを考えたきっかけは、中学校の塾で教えているときのことです。接続語の相互の関係をわかりやすく示せないかと思ったのです。最初はもっと単純な図式でしたが、それを二〇年ほどかけてまとめました。

 文章の論理的なながれが的確かどうかを確かめる判定方法があります。文と文との間に省略された接続語を入れてみるのです。それによって文のつながりがうまくいっているかどうかわかります。

 ほとんどの文と文との間に、十一種類の接続語のうちのどれかが入ります。文章のながれがいいときには、接続語は省略されるので書かれていません。しかし、何らかの論理が生きて働いています。だから、文章がつながっていると感じられるのです。そのつながり方は接続語で証明できます。

 文と文との間に、的確でない接続語が入ると、論理が乱れてしまいます。例に上げた接続語の「だから」と「なぜなら」とはペアになっています。

 先ほど問題を出したまま答えを言いませんでした。あらためて問いかけます。「だから」の反対は何でしょう。「……だから……」、この表現を逆に書き換えたらどうなるでしょうか。もうお分かりですね。「なぜなら」になります。

●対立する接続語の関係
 文章の添削ではこのような逆の表現を入れ替える場合があるのです。つまり、「理由を先述べて結論をいうか」、「結論を述べてから理由をいうか」という二つの選択です。

 理由が先なら、結論を「だから」でつなぎます。結論が先なら「なぜなら」でつなぎます。この二つの接続語は対立します。

 また、「事実」について語る場合には、「事実」の場合には、「すると」と「しかし」が対立します。前のことと後のことが自然につながる場合には「すると」です。それに対立するのは「しかし」です。「しかし」は、その前後の内容が逆の関係にあるのだと言われますが、そうではありません。前の文から想像されることが後の文でひっくり返る場合に、「しかし」を使います。

 ほかには、「例えば」が具体化、「つまり」が一般化、この二つも対立する組み合わせです。二つの内容が対等の関係で比べられる場合には「に対して」となります。そして、「もし」が仮定、「(する)ため」は目的です。これもペアの組み合わせです。

 ほとんどの文と文との関係が、この十一通りでカバーできるだろうと、わたしは考えています。いわば、この十一通りの接続語をマスターすれば、論理的に話をしたり、論理的なつながりを持った文章が書けようになるのです。

 以上で、今日の話を終わりにして、次回は各論として、添削の細かい点についてお話をする予定です。(一日目終了)

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