2009年01月21日

文章推敲力を育てる添削入門講座(34/35)大学編

◎ある大学で文章添削の実践者のための講義をしました。あらためて驚いたことには、文章の書き方の本は数多くあっても、添削や推敲について書かれた本がほとんどないということです。そこで、わたしはあらためて、文章力の養成を、添削と推敲の角度から考えることになりました。2日間で通算7時間の講義の記録に手を入れて少しずつ公開します。(2006.2.21、2006.3.7。第1−12回は旧サイトにあります)

【連載】第34回
●文章の読み方

 ひとつ細かい技法を紹介しましょう。添削する文章を見るときに、原稿用紙をテーブルの上に上下二段、左右二列に分けて並べるのです。ちょうど本を見開きで見るように全体が見通せます。ちょっとした工夫ですが、部分的に文章を見ているのとはちがいます。添削の能率があります。

 文章の内容をより広く把握できるからです。原稿を一枚ずつよむのとは大きなちがいです。携帯端末の小さな画面で文章をよむのと、パソコンの大きな画面でよむときちがいはここにあるのです。文章の全体を見通しながら、各部分を添削することが、より的確な添削につながります。

 みなさんは、本屋で本を買うときに、見開きにして字面を眺めることはありませんか。そして、ぺらぺらとめくって行くと、眺めるだけでも、ある程度、文章の善し悪しが分かります。さらに、部分的でいいですから、小さな声を出して読み上げるとなおさら内容がよくわかります。

 わたしは、声を出してよむのが癖になっていまして、文学館などへ行っても、展示作品をついつい小声で読んでしまうことがあります。また、電車の中でも、小声で表現よみの練習をしてしまうことがあります。ただし、喉の奥で筋肉を緊張させるだけで
、ほとんど聞こえないくらいの小さな声です。

 ちなみに、黙読をする時でも、人の喉の周辺の筋肉が運動するのです。それが実験によって証明されているそうです。ですから、ほとんど声を出さなくても、喉の緊張だけで音声イメージのトレーニングができます。アクセント、プロミネンス、イントネーションなどが明確なイメージになるのです。

 文章の理解でとくに大事なのは、プロミネンスです。ほとんどの文にプロミネンスされる語句があります。文がある種の主張をする場合や前の文の意味を受けて次の文が書かれた場合などには必ずプロミネンスがあります。ですから、黙読するときにも文中のいずれかの語句が強調されるはずです。

 次の例でもどんな意味を伝達するかによってプロミネンスの位置が変わります。
 「これは一般に知られている事実ではないが、私はあえて言いたいのだ。」

 いくつかのプロミネンスが考えられます。前半が前提で後半が主張となっています。一つは、「知られている」と「言いたい」との対比、もう一つは「一般」と「私」との対比です。それぞれ力が入ったものの言い方になります。これがプロミネンスです。

 文章を読んでプロミネンスが感じられるようになると、この人の文章はひと味足りないなという判断ができます。そのとき、そこに「しかも」を入れたらどうだろうかとか感じられます。何となくさみしいなというときに、プロミネンスの感覚の助けで書き加えるべき語句が見えることがあるのです。このあたりは上級の話です。

 以上のような読み方で、わたしはその本を買うか買わないか判断しています。添削のときにも、できるだけ広く字面を見ながら行う方がよいのです。(つづく)
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