2008年11月27日

朗読賞の結果―太宰治「女の決闘」のよみ

 お話しPod&ラジオデイズ朗読賞2008の審査結果が公開された。97編の応募をぽつりぽつり聞いていたので、結果に関心があった。最優秀賞は山口葉子さんの太宰治「女の決闘」である。いろいろな意味でおもしろい。

 この作品のよみを聞いたのは初めてだ。今年の太宰治没後60年と来年の生誕100年を機に注目すべき作品だと思う。

 わたしは以前に『表現よみとは何か』を書くときに文体分析にもとづいてよんだことがある。さまざまな「語り手」が混在している文体だ。太宰治がロシア文学者のドストエフスキー論をヒントにして書いたという説もある。
山口葉子さんは、そのいくつかの「語り口」を見事によみ分けている。

 朗読というと単調に単一の調子で読み上げるのが通例だが、山口さんのよみには、複数の語りの声がある。これがおもしろい。

 また、選評でおもしろかったのは、応募作品を4つに分類した次の項目だ。なるほどと思う。わたしは(4)は表現よみだなと思った。

 今回の作品の傾向を分類すると次のようになります。
(1)朗読の初歩としてまじめにていねいに読み上げた作品
(2)作品をはなれて自分なりの大胆な冒険を目ざした作品
(3)既成の朗読やナレーションを手本にしてよみ上げた作品
(4)作品の世界をとらえて芸術的な表現をした作品

 わたしはこの分類を参考に応募作品を聞き直してみた。すると、朗読作品の評価の基準と言うものが見えてきた。今後、朗読を聴くときの参考になるだろう。
posted by 渡辺知明 at 08:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 批評と感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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