2008年10月06日

文章推敲力を育てる添削入門講座(33/35 )大学編

◎ある大学で文章添削の実践者のための講義をしました。あらためて驚いたことには、文章の書き方の本は数多くあっても、添削や推敲について書かれた本がほとんどないということです。そこで、わたしはあらためて、文章力の養成を、添削と推敲の角度から考えることになりました。2日間で通算7時間の講義の記録に手を入れて少しずつ公開します。(2006.2.21、2006.3.7。第1−12回は旧サイトにあります)

【連載】第33回
●添削のレベルとは
 文章に添削をするときの「着目レベル」については、講義レジュメ「1の(3)」としてだいたいお話しいたしました。
 4つの段階、4つのレベルがあります。

 1、文字を直すのか?
 2、文を直すのか?
 3、文と文とのつながりを直すのか?
 4、段落を直すのか?

 添削というと表記などの字句直しばかりが問題になります。しかし、それは添削の最終段階でチェックするものです。それ以前に、大きなレベルから小さなレベルへ進むという手順をとるべきです。

●段落への注目
 理論文ではまず大づかみに段落の構成から見ます。文学文では、文章の頭から、一語一語の表現をていねいに読むのですが、理論文の場合には構造的に読みます。大きいレベルから小さいレベルへと読むという原則が成り立ちます。

 まず始めに、形式段落ごとに丸数字をつけます。形式段落とは、段落として一文字下げられたところです。この作業は文章の構造を分析する第一歩です。最初、ひと固まりに見えた文章も、段落ごとに分かれると全体像が見えてきます。

 これはコメントを書くときの呼び名になります。「何段落の何行目の……」として使えます。また、文章を書く指導でも、段落に丸数字をつけさせるとよいでしょう。レポートを出す時には必ず「段落に番号を振りなさい」と言うのです。さらに、「段落ごとに小見出しを付けなさい」と言えば段落の構成が意識できます。「それがこの大学の方法です」という特別なやり方になってもよいでしょう。

 小見出しをつけるなどと言うと特別な作業のように思われますが、文章を書くときには、だれもがやっているのです。途中まで書いていって、今まで何を書いたのかなと考えます。そのとき、段落全体の内容を小見出しにまとめてみるとよいのです。すると、次に書くべき内容がまとまった形で思い浮かんできます。

 日本コトバの会の文章教室では、文章助言の勉強のとき、グループで小見出しをつける方法をとっています。文章を順番に音読する前に、段落ごとの小見出しを確認します。司会者が「一段落の見出しをつけましょう。どなたか言ってください」と言うと参加者がそれぞれ的確な小見出しを言います。

 小見出しはたいてい段落の中のキーワードとして拾い出せます。印しつけ作業でで丸や線がつけてあれば、その語句から小見出しが選べます。たいていそれで間に合います。しかし、段落の内容をまとめた語句を工夫しなければならないこともあります。そんな文章はまとまりのよくない文章です。

 段落のキーワード、あるいはテーマについては、作者が意識しなければなりません。それに対して、添削する人は段落ごとの内容をとらえます。そして、段落の組み立てと文章の流れを考えます。そのときに、小見出しが役に立つのです。一つの段落を見たら、「ここの内容は、この小見出しにまとめられるな」というふうに段落のテーマをつかむのです。それをつかんでいないと、添削の方針も決まりません。

 いい文章ならばテーマがよく分かるように書けています。ところが、困ったことには、「この段落のテーマはどちらだろうか?」と迷うような文章が多いものです。迷った二つの場合があるときに、どちらがテーマなのか定めないと添削はできません。

 小見出しをつけると内容が二つに割れてしまう段落があります。一つの段落に二つの小見出しがつけたくなるのです。前半はこの内容なのに、後半はこの内容になるという具合です。その場合には、さっきの改行の記号で段落を二つに割ればいいのです。それも一つの添削です。

 段落に小見出しをつけることは、段落ごとのテーマをとらえることです。この読み方が大事です。読みちがいがあると添削の目標が変わってしまいます。そうして、段落の小見出しを並べて読んでみると、文章全体のおおまかな流れはつかめるものです。それで文章全体の見通しができますから、添削もやり易くなります。(つづく)

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