2019年は太宰治と中島敦の生誕110年の年である。中島敦は戦中に33歳で亡くなり、太宰治は戦後に39歳で亡くなった。終戦を挟んだ6年という期間について考えてみたい。
戦中の2人の作品を読みながら、2人が共有していた時代精神と生の姿をとらえて、お話しするつもりである。中島敦では、「
南洋譚」から「
幸福」「
夫婦」「
鷄」について取り上げたい。この時期の太宰治の作品は「
十二月八日」と中期の「
お伽草紙」「
新釈諸国噺」シリーズ12作品のいずれかである。
中島敦は、昭和16年7月からパラオに滞在した。そこで12月8日の日米開戦を知る。その三年後、昭和19年4月、わたしの父がパラオに上陸した。そして、終戦まで現地で過ごしたのだ。
